平成16年7月号

谷口雅春先生に学ぶ(3)

日本の実相顕現こそ世界恒久平和への道

国 元 貴 知

 大和の理念国家・日本

 私たちは、朝夕、世界の平和を祈っているが、イスラエル・パレスチナ紛争、イラク戦争後のテロ事件のニュースを聞く度に「祈りの行動化」が足りないと自省している。
  雅春先生は、人種、文化、宗教の違いを違いとしつつ、全人類が神の子であり、兄弟姉妹であると説かれた。そして、世界平和樹立のためには、日本が大和の理念を顕現し、大和の心を世界の人々に伝道しなければならないと示された。生長の家の歴史は、雅春先生の「ご巡錫の歴史」でもあり、ハワイ、北米、南米、ヨーロッパヘも鹿島立ちされた。
  大和の理念は、十六菊のご紋章に表われており、天地の八方(即ち十六方向)に広がるすべての国民のコトバをキク(菊、聴くの表徴)ことによって、それを知ろしめすというのが、日本犬皇の実相なのである。
  歴史的に見ても、六〇四年に聖徳太子が制定した十七条の憲法は、「和を以て貴しと為し、忤(さから)うこと無きを宗と為せ」にはじまり、「人事は独り断ずべからず、必ず衆と論ずべし」に終わっている。また、一八六八年に明治天皇が定めた「五箇条の御誓文」は、「広く会議を興し万機公論に決すべし。上下心を一にして盛んに経綸を行うべし(以下略)」とある。

  西洋による非白人地域の植民地分割

 ここで、近世の世界史に目を転じてみよう。高校の世界史教科書で「地理上の発見」のページを開いた時、私たちは、暗黒の中世から抜け出た感じを待った。コロンブスの西インド諸島発見(一四九二年)、バスコーダーガマによるインド航路発見二四九八年)。しかし、これは、スペイン、ポルトガル、後にオランダ、フランス、イギリスによるアジア、アフリカ、南米の植民地化の歴史につながったのである。
  高校生の頃、私は、ジョン・フォード監督、名優ジョン・ウェイン主演の西部劇映画に熱中した。アパッチ族、スー族、シャイアン族と戦う騎兵隊の格好よさ。しかし、これは、白人による原住民迫害のドラマだったのである。原住民は、西部へ向かう白人の銃剣だけでなく、白人が欧州から運んできた流行病(天然痘・はしか)によっても、免疫がないために生命を失っていった。
  アジアでは、スベインによるフィリピン征服(一五七〇年)、オランダによる東インド会社設立(一六〇二年)、イギリスによるシンガポール領有(一八一九年)、インド併合(一八五八年)、ビルマ併合(一八八六年)、仏印の成立(一八八七年)があり、アフリカは、ベルリン列国会議でバターを切り分けるように分割され、一九一四年における大陸の独立国はエチオピア、リビアの二国のみとなった。

  アジア諸国を目覚めさせた日露戦争

 来年は、日本海海戦百周年となるが、一九〇五年の日露戦争における日本の勝利は、アジア諸国の覚醒を促がした。
  インド独立の戦士で元首相ネールは、自伝で次のように回想している。「もう一つの重要な出来事で私に影響を及はしたものとして忘れることのできないのは日露戦争である。日本の勝利は私の熱狂を沸き立たせ、インドをヨーロッパヘの隷属から、アジアをヨーロッパヘの隷属から救い出すことに思いを馳せさせた。」
  アジアばかりではない。ヨーロッパでもロシアの圧政下に苦しんでいたポーランドやフインランドも日露戦争を機に独立を勝ち得た。英国の文豪H・G・ウェルズの言うように、「アジアは、絶望的にヨーロッパに立ちおくれて、どうしても取り返しがつかないという考え方を、日本は完全にふっとばし、帝政ロシアとの戦争でアジア史に一大エポックを創り、ヨーロッパの尊大と思いあがりに終止符を打った」(『世界文化史概観』)のであった。

 アジア、アフリカ諸国の独立を促進した大東亜戦争

  戦争は、国家間あるいは国家群間の相互作用である。双方に戦う意志があって、戦争は発生する。即ち、双方に、それぞれ戦争に対する正当性の主張がある。戦争は双務的であり、戦争原因も双務的であるので、戦争研究は、当然、双務的でなければならない。
  雅春先生は、戦争は迷妄と迷妄とのぶつかりであると説かれた。しかし、大東亜戦争の意義として、アジア、アフリカの諸民族に民族独立の精神を吹きこんだことを挙げていらっしゃる。
  日本は、第一次大戦のパリ講和会議で国際連盟規約第二十一条に人種差別撤廃を提案したが受け入れられなかった。日本は、大東亜戦争において、アジアにおける白人の帝国主義的支配を打破するとともに、その根底にあった白人優越の思想にも挑戦したのである。
  マッカーサー元帥は、一九五一年五月三日の米国上院軍事外交合同委員会聴聞会において、「日本が第二次大戦に突入した理由の大半は安全保障だった」と証言している。また、終戦直後に占領政策立案のために来日した社会学者ヘレン・ミアーズ女史は「近代日本は、西洋列強がつくり出した鏡であり、そこに映っているのは西洋白身の姿なのだ。近代日本の犯罪は、それを裁こうとしている連合国の犯罪である。西洋の価値観が、日本の伝統的価値観を完全破壊しようとしている。それが日本占領なのである」(『アメリカの鏡日本』)と記している。まさに雅春先生が憂えられたところを指摘している。
  大東亜戦争、第二次大戦後、一九四八年の国連総会で「世界人権宣言」が採択され、日本が永年努力してきた人種差別撤廃が実現したのである。終戦後、アジアでは続々と独立国が誕生し、この民族自決運動は、やがてアフリカにも飛び火し、アフリカ大陸でも次々と独立国が生まれ、五百年間続いてきた白人の有色入種植民地支配は、幕を閉じたのである。

 大和の心で世界の平和を、七つの光明宣言の実践を!

  生長の家の「七つの光明宣言」の第七条には「相愛協力の天国を地上に建設せんが為に実際運動を起す」とある。日露戦争以降、アジア、アフリカの諸民族に民族独立の精神を吹きこんできた日本は、昭和二十年八月に失った大和の理念を呼び戻さなければならない。雅春先生が示された日本の実相顕現、世界恒久平和樹立の目標に向かって邁進する全ての団体の内在的精神支柱となり、政治の指導原理を国会・地方議会の議員に与えていかなければならないのである。私たちは自分たちが置かれている各々の立場で、雅春先生のご遺志を実践していこうではないか。

  雅春先生は、昭和六十年五月二十六日の「最後のご講話で「皆さん、生長の家は『殺す勿れ』だから、戦争はない。すべての人間を生長の家に導いて「殺す勿れ」の最高道徳を政治家に実践させるよう導いてあげて下さい。」とおっしゃっている。私たちは、政治家の一大啓蒙運動に立ち上がらなければならない。





国元貴知氏

どんな教えか
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