平成16年8月号

谷口雅春先生に学ぶ(4)

日本の教育の原点に還ろう

国 元 貴 知


 日本の崩壊を憂える

 教育政策は国家百年の大計である。大東亜戦争は、昭和二十年(一九四五年)八月十五日に終わった。米軍は大規模な無差別爆撃を行い、終戦までの半年間で日本の六十の主要都市の市街地の五割を焼きつくし、最後には広島、長崎に原爆を投下した。
 空爆で工場も住宅も破壊された日本が、十年で立ち上がったことは奇跡に近かった。わが国の経済が神武景気のさなかにあった昭和三十一年(一九五六年)、オックスフォード農業経済研究所長のコーリン・クラーク博士が来日した。博士の講演の後、一記者が、「現在の神武景気をもたらした最大の功労者はだれか」と質問した。博士は即座に、「明治天皇である。明治天皇が制定した教育の基本理念と普通教育制度が今日の繁栄をもたらしている」と答えた。もちろん、江戸時代の寺子屋(庶民の子供に読書・習字などの初等教育を行なった)教育がそのベースにあった。
 来年(二〇〇五年)は、大東亜戦争が終了して六十年の節目を迎える。今、この時に日本の社会に目を向けてみよう。小学校低学年における学級崩壊、家庭内暴力や子供虐待による家庭崩壊、若年層の頻繁な離転職という職業観崩壊、企業経営者の法令違反に見られる経営倫理崩壊など、各面にわたっての崩壊が起こっている。このままでは、日本崩壊につながってしまうと憂えるのは、私一人であろうか。

 崩壊の源は戦後教育にある

  二千六百年前、中国の春秋時代、斉の宰相であった管仲の著と言われる『管子』(権修篇)には、「一年の計は、穀を樹うるに如(し)くは莫(な)し。十年の計は、木を樹うるに如くは莫し。終身の計は、人を樹うるに如くは莫し」とある。まさに、国民教育の如何によって、国は栄え、国は滅びるのである。
  七年間の長い占領行政が日本に及はしたマイナスの影響は、とても五十年では修復できないような大きなものとなった。日本を精神的・軍事的に弱体化しようという占領政策は、日本国憲法とそれに基づく教育基本法に表われている。
  この危険を早くに洞察し、警鐘を鳴らされたのが、谷口雅春先生であった。憂国の書にして愛国の書である『限りなく日本を愛す』を拝読すると、雅春先生のご慧眼と国を思われる至情に、ただ頭が下がるのみである。雅春先生は、文書活動にとどまることなく、教育崩壊を防ぐために新教育者連盟を立ち上げられたのである。宗教心・大和精神をベースにした教育こそ、真の教育である。明治の私たちの先人は、皆、真の教育者であった。
  明治三十一年(一八九八年)、英文で書かれた新渡戸稲造著『武士道』の序文に、「著名なベルギーの法学者、ラヴレー氏との会話がきっかけとなって、日本の宗教、道徳の観念の根底になっているものを深く考え、それが武士道であることに気がついた」とある。

  海外で広く読まれた『武士道』

  『武士道』は、初版刊行後大きな賞讃を博し、英語版だけでなく、ポーランド、ドイツ、ノルウェー、スぺイン、ロシア、イタリア語など多くの国の言葉に訳された。「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」「大和魂」など、日本の真の心を知ろうとする海外の多くの人々によって愛読されたのである。世界の発明王、トーマス・A・エジソンも読んでおり、「自分は『武士道』の義と勇に心が打たれ、発明の仕事にも生かされた」と記している。
  台湾の李登輝前総統は、『「武士道」解題』の中で、日本の宗教教育、日本的教育の偉大さを私たち現在の日本人に説いている。

  教育の日本的伝統

  日本の崩壊を防ぐためには、教育の崩壊を防がねばならない。その道は、日本の教育の伝統的精神に、先ず立ち還ることである。日本の教育の歴史的伝統が表されているものは何か。それは、明治二十三年(一八九〇年)十月三十日に発布された「教育に関する勅語」である。国民道徳協会訳文によって、その一部分を記しておく。
  「国民の皆さんは、子は親に孝養をつくし、兄弟姉妹は互いに力を合わせて助け合い、夫婦は仲むつまじく解け合い、友人は胸襟を開いて信じ合い、そして自分の言動をつつしみ、すべての人々に愛の手をさしのべ、学問を怠らず、職業に専念し、知識を養い、人格をみがき、さらに進んで、社会公共のために貢献し、また法律や秩序を守ることは勿論のこと、非常事態の発生の場合は、真心をささげて、国の平和と安全に奉仕しなければなりません。そして、これらのことは、善良な国民としての当然のつとめであるばかりでなく、また私たちの祖先が、今日まで身をもって示し残された伝統的美風を、更に一層明らかにすることでもあります。」
  教育勅語は、教育の根本が道義立国の達成にあることを明確に示している。ドイツのアデナウアー元首相は、独訳された教育勅語を執務室に掲げ、心の拠りどころにしていたと言われる。また、『台湾入と日本精神』を著わした蔡規燦氏は、台湾南部の高雄にある東方工商専科学校では、教育勅語を掲げて道徳教育を教えていると語っている。

  全国の同志よ、結集しよう

 私たちは、家庭において、職場において、「皇恩に感謝せよ。汝の父母に感謝せよ。汝の夫または妻に感謝せよ。汝の子に感謝せよ。汝の召使に感謝せよ。一切の人々に感謝せよ。」と『大調和の神示』を拝誦している。まさに教育勅語を読み上げているのである。
  現在、教育基本法を見直し、愛国心教育を入れることが検討されている。しかし、大切なことは、日本の教育の歴史的伝統を先ず継承し、その上で新しい地球社会で活動する日本人を育成するための内容を検討すべきなのである。
  心ある同志よ。日本の崩壊を防ぎ、日本の地球的使命を果たす日本人を育てるために、教育勅語に示された道徳理念に基づいた教育基本法の制定に取り組もうではないか。このことを雅春先生は、私たちに、今、強く求めていらっしゃるのである。そのためにも、先ず、小学生時代から知らず知らずに戦後日教組教育に汚染されて育った生長の家谷口雅宣副総裁並びに生長の家本部参議会メンバーを救わなければならない。これは、雅春先生の直弟子である私たちの義務であり、責任なのだ。雅春先生が示された壮大な人類光明化運動を推進するためにも、生長の家本部組織人の実相顕現を切に祈るものである。

 今回で擱筆するに当り、本誌購読者から編集人を通して励ましの言葉を頂いたことに対し、心から感謝申し上げたい。ありがとうございました。再合掌




 

国元貴知氏
どんな教えか
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