平成20年 4月号

み教えを生きる悦び (49)

霊の選士 ─ 第一回全国高校生
 伊勢神宮復興奉仕練成会

鎌 田 久 子


 「有難うございます。有難うございまぁーす」 わかい溌剌とした声が、神域にひびき渡る。

  畏れおおくも私たちは、御正殿右横の古殿地 (遷宮の年、旧正殿を安置する) を通り、奥へ奥へと入らせていただく。伊勢湾台風が霊域周辺の神木をなど倒さなかったら、このような霊気にみちた聖域に入り、献労させて頂くことは、生涯あり得ない。そう思うと、ただ嬉しくて有難くて、おのずから感謝声明を誦えずにはいられない。

  宇治別格本山の職員の方から、二十分ほど作業の手順を教えていただくと、私たちは待ってましたとばかり走り回り、散乱している木片を集め束ねていく。 十二時になると昼食の笛が鴫る。みんなで車座になって頬ばったおにぎりは本当に美味しかった。夕暮れが迫る五時には終了の笛がなる。でも私たちはあと五分、あと五分とひたすら作業をつづけた。

  大晦日の夜は、東京から駆けつけた仙頭泰先生の講話を、私は初めて拝聴した。魂にズシーンとひびくあのときのお話は、いまも忘れられない。

 「皆さんは、自分の意志でこの練成会に参加したんだと思っているでしょう。でも違うのです。神様が、皆さんを選んでここにお集めになったのです。 ”神、我を選びしなり” である … 」 と。
  そして最後に智慧の言葉を音吐朗々と読みあげ、締め括られた。

◎奉仕とは新価値の創造である。新価値の創造のほかに奉仕はない。

◎人に奉仕するなどと考えているのは生ぬるい。新価値の創造は宇宙に奉仕するので
  ある。神に奉仕するのである。 宇宙がわれに生き、われが宇宙と共に歩むのである。


  伊勢の聖地で聴聞した智慧の言葉は、とても新鮮に、ストーンと腑に落ちた。いまも私は、この智慧の言葉に導かれて思い半ばの人生を歩ませていただいている。

  昭和三十五年元旦。 私たちはトラック二台に分乗して宇治橋の袂に集る。 二列縦隊に整列し、大日章旗と 「第一回全国高校生伊勢神宮復興奉仕隊」 の幟を先頭に ”使命行進曲” を高らかに歌いながら威風堂々、光の行進を開始した。紋付羽織袴の方や、髪を桃割りに結った振袖のお嬢様など正装参拝の方々が、びっくりして立ち止まる。
  最初は異様な表情をし、やがて幟の字を読んで得心される。 何しろ私たちは、元旦の朝から作業衣の上に縄の帯をしめ、その腰帯に鎌を差しての行進なのだから … 。

 「ご苦労様」と涙ぐむ老婦人。 「有難う! 有難う!」 と合掌する初老の紳士。 万歳!万歳!と連呼される方。 初詣の方々に大和心の喚起を促がす行進と映っている!と思うと、歓びひとしおであった。

  夜は、練成最後の体験・感想発表の時間である。

 ハイポン (愛称) の発表に全員が泣いた。

 「僕は、宇治練成で、みんなに伊勢の献労に行こうと誘われたけど、絶対に行かないと断りました。だって足が不自由だから … 。 みんなに迷惑かけるから … 。 なのに、なのに、何もしなくていいから、お参りに行こう! 疲れたら交代でおんぶしてやるからって言ってくれて (涙声で) 参加しました。 (私たちも泣きながら拍手)
 ボクは、ボクは、伊勢に来させていただいて本当によかった! (拍手) みんなの半分くらいしか献労できなかったけど、倒れたご神木の枝を鎌で払ったり、少しは復興のお役に立てた。
 嫌がる僕を誘ってくれて本当に有難う。 ボクは、ご正殿を台風が避けて通過した話を聴くことができて感謝でいっぱいです。 ボクは、神様に選ばれてここに来させていただいた神の子だと解らせてもらいました。僕にも偉大な神国日本のことを伝える使命があったんです。」

  魂が感動して語る言葉に、みんなが共感し共に涙した。
  次々と体験発表者は続く。

 「樹齢千年の大杉の前を通ったとき、僕は霊気を下さいと抱きつきました。真っ直ぐに伸びている大杉。いま傾きかけている日本が、この大杉のように、真っ直ぐに伸びてゆくように、僕たちも光明化運動の霊の選士となって頑張ろうと思いました。」

  やがて伊勢神宮の鈴木様がご挨拶に立たれた。

 「皆さん、私は父親が死んでも人前では涙を見せない男でした。でも、今日は我慢できずに泣きました。 感激の嬉し涙です。
  戦後の日本は、神を敬う心を失い、道徳は地に落ち、私は眠れぬ夜を送っておりました。けれども、正しい国家観を持った純粋な君たちがいてくれる。日本の未来に希望をつなぐことが出来ました。
  キリストが天国に召されたあと、残された弟子たちはたった十二人でした。その弟子たちが命がけで伝道した結果、世界中にキリスト教が広まったのです。
  谷口雅春先生が説かれる ”万教帰一” の真理を伝える若き霊の選士は、六十人もいるのです。どうか、皆さん、日本の国をよろしくお願いします。」

と結ばれた。

(つづく)





鎌田久子氏
どんな教えか
総合目次