平成22年 4月号

み教えを生きる悦び (72)

”いのちを守りたい” の鳩山政権で中絶支給費用42万円

鎌 田 久 子


 小学四年生の理科の授業の時です。 

「みなさん、この氷が溶けると何になりますか?」
「ハイッ」
「ハイッ」
  先生は、真っ先に手をあげた生徒を指しました。
「水になります」(そうです)と、他の生徒も満足そうにうなずきあっています。
「ウーム。たしかに水になりますね。でも、理科の授業にふさわしい答えは…?」
 と先生。

  するとキラツと瞳を輝かせた女性徒が、元気よく手をあげて答えました。

「氷が溶けたら、春になります。」

  一瞬静まりかえった教室に、爆笑のうずがおこりました。少女は恥ずかしそうに頬を染め、うつむいてしまいました。
  先生は黒板に”水=H20”と書きました。

  以前、何かで読んだことを、授業風景で再現してみました。少女の答えは、理科の授業では×でしょう。 でも国語の授業なら○です 。私は無機質な即物的答えよりも、感性ゆたかな少女の発想に共鳴し、感動すら覚えます。

  明るい日ざしの温もりの中で、動植物・魚鳥類が、冬眠から覚めこぞって躍動を始める春。万物が息吹く、この春にこそ、み教えにより、神の子の自覚を深めさせていただいた私たちは、天を仰ぎ、 「父なる神よ、すべての日本人にあなたの叡智のひらめきを。聖なる生命を生かし育む愛の歓びを。世界中の国と民族が争うことなく、飢えることなく、与えあい、睦みあう中心帰一の世界を実現せしめ給え 」と祈り、 「すでに成就しつつあり」 と、深い感謝の祈りを捧げる日常でありたいと、切に思うのです。

  とくに春は、生きとし生けるものの懐妊率が高い季節です。ところが、 「春よ、こい」 と待ちわびているとき、産経新聞を目にして、愕然となりました。
  それは、毎週火曜日の 「産科医解体新書」 に書いておられる産科医・田村正明氏の記事です。

  「現在の出産一時金は、約42万円。 妊娠12週経過後に中絶手術をした場合にも、医師の 『妊娠継続不可』 の証明書を提出すれば、同じく42万円が支給される」

  昨年十一月に群馬県伊勢崎市で、27歳の女性が自分の出産証明書を修正液で消し、中絶証明書に偽造して双子を中絶したと届け出た。市は84万円を支給すべく、その病院に問い合わせた結果、ウソが判明、女性は逮捕されたという。
  私は、この記事を読むまでは出産費用の一時金は37万円と思っていましたが、支給額が多くなることは有り難いことです。しかし、中絶した場合にも同額とは … 。 恐れ入りました。

  昨年の五月、新宿区から立候補した田口圭氏から 「民主党の小宮山洋子氏が、中絶費用を国から出すべきだと訴えてますよ」 と電話を戴いた。お互いに、 「民主党は、おかしな議員で構成されています。無抵抗の小さな生命、健全な生命を殺人する費用を出せとは、言語道断です」 と憤慨ひとしきりでしたが ─ 。
  それにしても、国民の知らない問に、いつ中絶費用が支給されるようになったのか、 「天使のほほえみ」 理事・久保山氏に調べて貰いました。7頁にわたる法令の出所は厚生省です。

○平成21年10月1日施行 − 実施期間は平成23年3月31日まで運用されるとあります。

一、支給要件(中略)
(1)妊娠4ヵ月以上の異常分娩をした場合。
(2)母体保護法に基づく妊娠4ヵ月以上の胎児の人工妊娠中絶をした場合。また双生児を出産した場合には、出産が二度あったものとして、倍額を支給する。

  この法令は、なんと 「民主党政権三ヵ月後に発令」 されていたのです。伊勢崎巾の27歳の女性は、この法令が出た一ヵ月後に、双子を中絶したと偽って、84万円の支給を要請し、逮捕されました。ただ、この事件は、実際には中絶をしていなかったことにやや救いがあります。

  鳩山首相は初の施政方針演説で、 「いのちを守りたい。 いのちを守りたいと願うのです。 生まれくるいのち、育ちゆくいのちを守りたい」 と24回も ”いのちを守りたい” という詩的フレーズを使いました。
  その守りたい生命の中に、最も大切な二つの生命が抜けています。日本の国の生命と、日本の胎児の生命です。そこで鳩山首相に申し上げたい。

 『いのちを守りたい鳩山首相。あの野放し中絶を許している母体保護法の経済的理由の五文字削除に、心を砕き、身を粉にしてご尽力ください。』

 『いのちを守りたい鳩山首相。 昨年厚生省が中絶費用42万円を支給する法令を定めたことをご存知ですか。 多分首相には具申せずに発令されたのでしょう。 この法令によって医者は中絶費用の平均15万円取得。 妊婦は42万円か入手できます。 医者と妊婦が結託すれば胎児の生命と引き替えにお金を取得できる殺人奨励法です。  
  何卒首相、この法令をただちに廃止して下さいませ。』





鎌田久子氏
どんな教えか
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