平成16年 7月号

み教えを生きる悦び (6)

ある見真会での出来事 (一)

鎌 田 久 子
 


  かつて、M県の一泊見真会に出講する四日前、その県から分厚い 「親展」 の封書が届いた。差出人の氏名は、存じ上げない方からだった。概要は、娘の幸福を願う母の心情が切々と綴られていた。

 「私の娘は、妻子のいる上司と深い仲になり、その間、中絶もしている。 主人に告げれば怒って勘当するだろう。そうなれば、娘は家を飛び出し、どこかに部屋を借り、上司の家族に顔向けできない生き方を始めるだろう。
  何度いましめても聴く耳を持たないこの娘に、白鳩会員として耐え難い苦しみにさいなまれ、眠れない日々を過ごしている。

  そんな折、教化部に講師の顔写真入り宣伝チラシが置いてあった。娘とあまり年齢差のなさそうな講師の話なら、きっと娘は素直な気持で、御教えを学んでくれる … と。二枚のチラシを仏壇に供え、御先祖のご加護を祈り、昨夜、娘を見真会に誘ったところ、ジーッ と見入って後、 『白鳩会の一泊って午後からなの? 土曜日は半休だから参加してみようかナ』 と言ってくれました。どうか娘をお救い下さい。お導き下さい。必ず二人で参加させて頂きます。有難うございます。
  なお、この手紙のことは、娘にも他の方にも口外なさらないで頂きたい。」
と結ばれていた。

 すぐさま私も 「親展」 の速達を、住所氏名を記さずに投函した。

 「合掌 お申し越しの件、万事承知致しました。辛く、苦しいご胸中をお察しし、涙が出ました。よくこそ打ち明けて下さいました。問題は、表現されることによって、半分は氷解されていきます。
  当日の第一講話は 『生命 (いのち) ・ この美しく神秘なるもの』 という題で、心を込めて話させて頂きます。夜は ”浄心行” で罪機れを洗い流しましょう。すでにお二人は、大いなる神の御手に掬いとられ、祝福されていらっしゃいます。お目もじの折は、挨拶は無用です。私もお二人に特別な視線を送るようなことは致しませんので悪しからず。お嬢様は、必ず神の子の神性に目覚め、悪業を断ち切ることが出来ます。掴んでらっしゃる仮りの姿を放ちましょう。 深謝 ・ 礼拝 」

  その頃の私は、日本国実相顕現をめざし、三つの運動推進 ( @ 諸悪の根元現憲法の廃棄、 A 「優生保護法」の改正、 B 真理を行じ伝える「白鳩会員」の拡大) に燃えていた。とくにAは、法律改正を急がないと、神から与えられた、日本民族の使命遂行にはほど遠い世界一の殺人 (堕胎) 国家として悪行を犯していく ─ 。という危惧を抱いていた。

  剣持加津夫氏の撮られたリアルな中絶児のカラー写真 ・ その他、たくさん資料を用意して伺ったM県で、わたしは初めて過去の自分をさらけ出すことにした。
  ”生命” についてどうしても分からず、苦しみ抜いた日々のことを ─ 。 安心立命の境地は、生涯得られないだろうと、四歳位からずっと無限に聖らかな世界と現象の肉体との対比に悩みつづけて二十一歳の春休み。面壁八年の達磨大師の故事にならって断食五日目に、八時間神想観の行に入ったときのこと。片栗粉がすうーつと透明になるように。不自由な肉体人間への固執概念が すうーっ と消えて、生命がぐんぐん無限大の世界に上昇し、宇宙いっぱいに広がっていった ─ 。

  そのときのお話をさせて頂き、 「神は人間の光源にして人間は神より出でたる光なり」 を実感させて頂きましたと、お聖経の言葉が口をついて出たときハプニングが起きた。
  後方から津波が押し寄せるような 「グワォー、グワォー」 という大音声が響いてきたのである。何の音かといぶかったが、会場の方々の意識はこちらに集中していたのでそのまま私は話をつづけた。やがて壇上からはよく見えるので、それが後方に坐っている方が身体を前後左右にゆすりながら発している声だとわかった。音声が止むと、その方はパタッと前に倒れられた。気づいた方は横と後ろの二人だけだったため、ちょうど入っていらした男の人と三人で抱きかかえて別室に連れて行って下さった。

  夕食 ・ 入浴 ・ その間の休憩時間には、数枚の浄心行 (過去の罪を隠さず書き、聖火で燃やす) の紙を取りにきて、みな真剣に熱心に書いていらっしやった。

   (つづく)





鎌田久子氏
どんな教えか
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