平成17年 8月号

み教えを生きる悦び (19)

谷口雅春先生に聞きほれ、輝子先生に見ほれて …

鎌 田 久 子


 かつてのわが家は、お仏壇を中心にして、右上に、天皇陛下・皇后陛下のご真影、その並びのやや下がった位置に、谷口雅春先生・輝子先生のお写真(白黒)が掲げられ、朝夕、礼拝させていただくことが、慣わしとなっていた。
 左側には、父の大きな肖像写真が私たち母子を見守るように掲げられていた。母はいつも、その遺影に合掌しながら、語りかけていた。
 「あなた、これから生長の家の誌友会に行かせて頂きます。高明や雅子が学校から帰ってきましたら、宜しくお願いしますね。行ってまいります。」
 私も合掌しながら、「イッテマイリマス」と、父に挨拶し、真理のご講話と”和顔・愛語・讃嘆”のとび交う誌友会につれられて行くことが、何にもまさる悦びであった。

  それに、雨の降る日は、大好きな母の背におんぶされて誌友会に行けるので、とても嬉しかった。人通りの少ない道にさしかかると、母は背中を軽くゆすりながら、はずんだ声で歌ってくれた。

  雨あめふれふれ 母さんの
  お背なに おんぶで 誌友会
  ピッチピッチ楽しい  ラン・ラン・ラン

 本当は、母も嬉しかったそうである。それは、どんな悪天候の日でも、久子が誌友会に行くことを嫌がらなかったからだといっていた。
 むかし、母は歌舞伎鑑賞と読書が趣味だった。それが 「昭和十年に、『生長の家』を『主婦の友』で識り、御教えに魅せられて入信。真理を聴聞することと、『生命の實相』をはじめ聖典・神誌を拝読することが、魂の無上の歓びになり、このみ教えのすばらしさを、他の方々にお伝えせずにはいられないという最高の趣味に変わってしまった。」 と話していた。そんな母に育てられた私も、いつしか母と同じ趣味を生きるようになっていた。
 いま思うと、なんという倖せな人生を歩ませていただいてきたことかと、熱い感謝が込み上げてきて、胸がいっぱいになる。

 昭和二十九年三月一日、生長の家本部会館が落慶し、全国から信徒の方々が参集した。母と私も、この記念すべき立教二十五周年行事の御講習会に参加させていただいた。
 まだ原宿周辺には高い建物がなく、地下一階、地上六階の本部会館は、偉容を誇っていた。長蛇の列が少しずつ動き、やがて正面入り口にさしかかると、皆様が ホーッ と、天空を仰ぎ感嘆されて足を止められる。谷口雅春先生にご風貌が似通った白衣の御神像の右手人差し指は天を指し、左のお手には巻物が … 。
 後に解ったことは、この御神像と一直線上に皇居があり、さらにその線を西に延長すれば、いささかもぶれることなく、龍宮住吉本官・鎮護国家出龍宮顕斎殿が位置しているという。まことに神慮はかり知れない。

 地下一階の下足をすませ、わくわくしながら一階大道場に入ると、新しい畳の香りに全身が包まれる。正面舞台の中央には、今までに観たことのない、大きな 『實相』 (谷口雅春先生の霊筆) の御額が掲げられている。二拝二拍手一揖をさせていただくと、世塵がはらい清められ、心の中に静謐がひろがる。
 司会の方から 「荷物を胸に、前進を」 と、何度も促され、まさに立錐の余地なき神の子雲集の現成である。
 やがて、万雷の拍手の中、谷口雅春先生輝子先生のお姿が … 。幼いときより、両先生のお写真を仰ぎ、拝させていただいていたものの、今日の、このとき、あまりにも尊く、気高く、魂の内奥から輝き出づる美しさに、魂消えるほどの感動で心身がふるえた。
 両先生は、天界から下界に肉体をまとわれて天降られた男神様・女神様。この日、初めて聴聞させていただく雅春先生のお声は、きめこまやかな、絹の篩(ふるい)にかけられたような神秘なひびきに満ち、諄々と真理をお説きになられるそのお姿は、神さながらであられた。

 私はふと、輝子先生のお声をとおしての真理のご法話も拝聴したいと思い、お姿を拝した。先ほどから一時間以上も中央の雅春先生に対される御姿勢のなんとお美しく凛々しいことよ。ふくよかなお胸をすうっと張られ、背すじをぴいんと伸ばされて、微動だにされないご態度に、私は充分に学ばせて頂くのだった。 私の魂の耳は、雅春先生のお声をとおして、宇宙普遍の真理に聴きほれ、魂の眼は、全身から馥郁とした香りとともに、愛と美と清らかさをたたえた輝子先生に見ほれていた。

 法悦にみたされた午前の御講習会 (三月四日) は、終了した。ちょうど、モーゼが、シナイ山の頂で、十戒をうけ、神の掟を伝える聖使徒として山を下りるときの神々しく容貌が変化していたように、受講された皆様の風貌も、いちだんと輝きを増していた。私は母に告げた。
 「この、最高にすばらしいみ教えにめぐりあえた歓びにくらべたら、この世的なもの (地位・名誉・財産) なんて、なんにもいらないわ …… 」 と。





鎌田久子氏
どんな教えか
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